あの時の自分は、なんて嫌なヤツだったんだろう。商売の大前提すら知らなかった。

僕は、15年前にも付知町を憂ていた。

イベントの役員や、スタンプ会の役も熱心に取り組んだ。(つもり)
「町の危機には、みんなで取組まないと乗り越えられない」なんて信じていたんだ。

でも、現実は違った。
商売人は仲が悪い。

小さな小さな町なのに、ライバル店が協力するならオレはやらない、とかさ。

お客様が減っているのは、同じ町の同業のせいじゃなく
この町自体に魅力がなくなってるからなのに
ケンカしている場合じゃなくて、一緒に何かを始めないといけないのに。
そう思いながらイベントに取り組んでいた。

イベントってさ。最悪だよ。
自分の店をほっぽり出して、汗だして体力使って声もからしてさ。
一日どころか、準備に数日、片づけに一日、当日は店を閉めてお手伝い。
そして、お客様はイベント目当てだから自店の集客にはならない。
ご褒美は、打ち上げにバーベキュー焼きながら
偉そうなオッサンがしたり顔でする「昔はよかった話」だったりしてさ。

極めつけの一言をもらった。
「お前は仕入して店に並べているだけじゃないか。何も作れないクセに」
「商店なんて、町に何の貢献もしていないじゃないか」

ある日「あ~、何してんだろうな?」って思ったら・・・

営業日の真昼間だけどしるもんか!
重いシャッター地面にたたきつけて隣町のショッピングセンターへ逃げ出した。
エスカレーターは沢山のお客を運び吐き出し・・・
人の群れと流れを呆然と半日眺めた。

そして決めた。

「町のことなんてどうでもいい。自分だけ頑張ろう」

全ての役は断り、付き合いの悪いヤツになり、自分のことだけ考えた。
やがて、恐ろしい事実に気が付いたんだ。
僕は、町のためにという大義名分を使って本業から逃げていたことに。

自店の売上をあげるより、町のボランティアの方が楽だったから。
自店の売上も作れないくせに、イベント役員なら偉そうなことが言えたから。
自店のお客様をよく知りもせず、だからダメだと頭から決めつけていたことに。

ダメダメなのは僕自身だった・・・
そりゃ、お客様こないよな。当然売上もないさ。
恥ずかしかった。

力が欲しいと思った。
少年ジャンプの漫画の主人公みたいに。
でも、魔法はないからコツコツとやり直すことにした。

自分の武器はと考えたら?文字を書くことだけは好きだと気が付いた。
だから、チラシを書いて、ダイレクトメールを書いた。
書いて書いて書いた。
学生時代以来のペンダコを作り、商工会の印刷機をほぼ独占使用した。
自分を伝えだすと、応えてくれるお客様が現れ出した。

商売の大前提をやっとで知った。
「知らない店で買う方法はないし、知らない物を買う方法もない」

店の外に出るイベントにアレルギーになっていたので
店の中でやるイベントに取組んで売上につなげていった。

自分の店にお客様が来店して下さる。
問屋メーカーはじめ視察に来られる人は
「どこからお客様が湧いてくるんですか?」と言う。

この過疎地で、確かにお客様は湧くものかもしれない。
付知町の山が自然に清水を湧かせるように、お店もお客様を湧かせなくちゃいけない。
無理なく湧かせるには、自然体になること。

自分のこと、店のこと、商品のこと、技術のこと
まずは町の人にもう一度伝え直してみようと、いつも思い続けていたい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です