都会から過疎地に人を呼ぶための、初めの一歩

僕は、住んでいる付知町では、よそ者だ。

結婚して初めて知った町。
結婚した相方が生れ育った町。

電車も廃線になった過疎地だけれど
僕の実家は、もっと山の中だったから便利な場所だと思った。
料理していて醤油が切れても走って買いに行ける街中だ。
(そうした店舗は恐ろしい勢いで閉店しているけれど)
隣近所の、子供が泣く声、親が叱る声なんかもつつぬけで
赤ちゃんが泣く声は、なんだか子育てに参加している気がする。
風呂洗いの音や、夕飯の支度の匂いが分かるくらいに集まって暮らす。

その分、隣との敷地境界線のもめごとや
買物して来た袋の中身まで詮索されたり
町内会の行事は絶対だったり
様々な役員が持ち回りでやってきたり。
窮屈なものだ。

こんな町で、すっかりくたびれた時計店を引き継いだ。
その大変さは、すっぱりと割愛してしまうが、この店を立て直した。
都会から視察に来る人まで現れて・・・ふと気づく。
この店をこれ以上大きくするとしたら、田舎の百貨店になるしかない。
仕入販売小売業で、人口は限られ減少している地域でキャパはすぐにオーバーしてしまった・・・

車で30分走れば、マスコミ宣伝している大手チェーン店が乱立する。
スマホで、手のひらの上で買い物すれば翌日には荷物が届く。
なんだかんだと活動している地元人のグループには、よそ者は入りにくい。
僕は酒も弱く、飲み会は苦痛でしかないし。

店の売上は伸びつつあったけれど
頭の片隅では、商売を伸ばす可能性を探り続けた。
部屋の隅っこに常に蜘蛛の巣がはっているような
とってもとってもぬぐえない、厄介な存在として。

可能性は二つだと思った。
一つは、自分が作っている店のノウハウをもって
立地や規模などそっくりな他所の田舎で同じ様な店を増やしていくこと。
(つまり、支店方式で田舎版チェーン店みたいな感じかな)
もう一つは、自店のノウハウを他店に教えに他所に出ていくこと。
(つまり、コンサルタント)

僕のノウハウは、地元客だけを客にするしかできなかったから。
都会から田舎に人を呼んでこれるものではなかったから。
仕入販売だけの弱さがつらかった。
自分で物が作り出せないのは、過疎地では特に弱さだった。
物流費用だけでも過疎地は経費がかかっているのだから。
かといって、インターネット販売なんて、仕入れ品は全世界がライバルになる。

だから他所に出ていくのが、僕の商売を伸ばす可能性になった。
そして、田舎版チェーン店は、大手チェーン店がさらに人口が減ったらやるだろうからやめた。
大手資本と対抗することは出来ない。

残るは、自分のノウハウをもって全国を旅することだった。
自信なんてないし、恐ろしいし、やったこともないし・・・
ただ一つのよりどころは「教えてほしい」という数人の人がいたことだけ。

机上論のコンサルタントではない。
人生も仕事もいっしょくたにしか生きられない商売人としての視点。
こんなんで食べて行けるだろうか?
付知町の店はどうするのか?
まずは店を続けながら、可能なことからやってみることにした。

ドキドキしながら「私のノウハウを買いませんか」と手紙を書いた。
名刺交換してもらった名刺をひっくり返して約90名に。
そのうち50名ほどが申し込んでいただき、その金額を元手に初めてHPを作った。
この感覚は、物売りだった僕には新鮮だった。
なんというか・・・藁しべ長者の昔話のようだと思った。

自分にとっては用済みだけど、世の中には欲しいといってくれる人がいる不思議。
自分が商品になる摩訶不思議。
仕入販売だけしていては気が付けなかった。

物事を作り出すことが出来れば、商圏は一気に広がる。

コンサルタントの仕事は地元には一切秘密ではじめた。
それは、自分の店のお客様には関係ないことだから。
でも、だんだんと秘密はばれていく。

田舎から都会に行くには、早朝まだ出ている星をみて走り、帰りは真夜中の星を見て帰るってこと。

同じ付知町に住む同年代の女性から、外に出ていく仕事なんてすごいと言われた。
僕には強い違和感のある言葉だけれど。
僕は外に出ていきたいわけじゃない、外から人を呼べるようになりたいんだ。

自分が何かひとつ成し遂げること。
それが、次のステップになるのが藁しべ長者だから。
いつになったら、付知町に人を呼べるようになるかと思いながら12年もたってしまった。
自分の人生残り時間を考えたら、そろそろはじめないと間に合わない。

都会から、この田舎「付知町」に人を呼んでも、消費する場所がなかったら意味がない。
だから、僕の地域おこしは「付知町にいまある店を強くすること」から始める。
地元の人が、大切なお客様が来た時に、連れて行きたい店になること。
ここからスタートしたい。

「都会から過疎地に人を呼ぶための、初めの一歩」への2件のフィードバック

    1. 楽しみながら生み出したアイデアと実践は良いモノになる。が持論です^^
      まだまだスタート手前って感じです。これからもよろしくお願いいたします。

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